「市民的不服従 政治理論のパラダイム転換」 | 非暴力平和隊・日本(NPJ) 書籍紹介コーナー 

「市民的不服従 政治理論のパラダイム転換」

タイトル:市民的不服従
著者:寺島 俊穂 (関西大学教授)



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「市民的不服従」(寺島俊穂著、風行社発行)という本を

紹介したいと思います。
私がいま読みかけている本です。

329頁、3,150円(税込み)と少し高い本かも知れませんが、

読みごたえはありそうです。


 第1章 市民的不服従の論理
 第2章 ソローとガンディー
 第3章 M.L.キングと公民権運動
 第4章 指紋押捺拒否の思想と運動
 第5章 兵役拒否の思想
 第6章 市民的防衛論の検討
 第7章 非暴力防衛の思想
 第8章 憲法第九条と戦争の廃絶


という内容で、ソロー、ガンディー、キング牧師の思想の核心に

迫ろうと試み、ジーン・シャープやガルトゥングの考え方

についても触れられており、

憲法第九条の経緯と非暴力原理について書かれています。


私は最後の章から読み始めたのですが、最後のほうで、

 「憲法の前文と第九条が要請していることは、
  非暴力による紛争解決への道であり、

  その実績を積んで行くことが日本政府および

  日本国民の今後の課題となるであろう。

  非暴力による紛争解決というのは、

  国際紛争に対しては、紛争解決のため、

  また紛争時の人命救助のため非武装、非暴力で貢献し、

  日常的には戦争や暴力紛争の予防のために

  尽力することである」


と書かれており、非暴力平和隊(NP)やGPPAC*の目指すものと

同じ道であることを主張されておられます。


また、論議の的になっている自衛権についても、

武力に頼ることなく、


 「非暴力的手段で積極的に闘い、

  自分たちの社会を守るという意味で『非暴力自衛権』

  という言い方のほうが憲法第九条に適合していると考えている」


と書かれています。


なお、著者の寺島さんは、「憲法9条の会・関西」の講演会で

お話をうかがったことがあり、その際に

WRI(War Resisters' International、戦争抵抗者インターナショナル)

のことを教えていただいた方です。


                   非暴力平和隊・日本(NPJ)理事 

                                 小林 善樹

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*GPPAC

Global Partnership for the Prevention of Armed Conflict

(武力紛争予防のためのグローバルパートナーシップ)の頭文字。

詳しくは、こちら をご覧ください。


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非暴力平和隊・日本(NPJ)の理事である小林善樹さんの紹介で

いわき市立常磐図書館にリクエストしたら買ってくれた本書を

ほぼ読みましたが、一冊手元に欲しいと思っています。


まず「はじめに」に、


 「どのようにして侵略戦争に対して自衛戦争以外の

  抵抗手段を見いだすことができるのかという問題について考察する」


とあります。


第Ⅰ部「市民的不服従の思想と実践」の

第1章「市民的不服従の論理」にも


 「外国軍の侵略という事態が起こったとき」

  

 「侵略に対する抵抗運動としても」


 「侵略に対する、市民的不服従も含む

  非暴力手段による民衆抵抗の有効性」


などという言及があります。


第Ⅱ部「戦争廃絶の論理」では、第5章「兵役拒否の思想」に続き

第6章「市民的防衛論の検討」、第7章「非暴力防衛の思想」で

現時点での丁寧な検討がなされています。

そして第8章「憲法第九条と戦争の廃絶」で結ばれています。

これですべてということではありませんが、

宮田光雄さんの「非武装国民抵抗の思想」 (1971年)で

途切れてしまったいたのかと思っていたものが

このような形で継承されていること、とても嬉しく思いました。

(丁寧な参考文献もありがたいと思っています)


憲法が問題になっている今、

「非暴力抵抗」は「非暴力平和隊」と左右の両輪をなす

貴重なオルタナティブの提案だと思います。
「NP・日本」としても その規約の「目的」に付け加えることを

検討するべきではないかとさえ 思いますが 如何でしょうか? 


合掌


                          鞍田 東